医局を辞める(退局する)ときに考えること|切り出し方・退職のルール・専門医研修
医局を辞めるとき、まず何を整理する?

「医局を辞める」という言葉には、いくつかの手続きが含まれています。最初に、自分の場合にどれが当てはまるかを整理します。
| やめるもの | 相手 | 決めるもの |
|---|---|---|
| 医局の所属 | 教授・医局長など | 退局の時期、医局独自の手続き(あれば) |
| 勤務先の雇用契約 | 勤務先の病院(院長・部長・人事担当) | 退職日、引き継ぎ、有給休暇、書類 |
| 専門研修プログラム | プログラム統括責任者・領域学会 | 辞退・中断・移動の手続き |
| 非常勤・兼業先 | それぞれの勤務先 | 続けるか、いつまで勤めるか |
大学院に在籍している、奨学金・修学資金の返還条件がある、といった事情があれば、それぞれの窓口にも確認が必要です。
雇用主は誰?関連病院への「派遣」と雇用契約の関係
医局の人事で関連病院に赴任することを「派遣」と呼ぶことがありますが、退職の手続きを考えるときに大事なのは、自分が誰と労働契約を結んでいるかです。
労働契約は、労働者が使用者に使用されて働き、使用者が賃金を払うことについて、両者が合意することで成立します(労働契約法第6条)。「使用者」は、使用する労働者に賃金を払う者です(同法第2条)[1]。使用者は労働契約を結ぶときに、賃金や労働時間などの労働条件を明示しなければなりません(労働基準法第15条)[2]。
- 関連病院に勤務している場合 — その病院から労働条件通知書(雇用契約書)を受け取り、その病院から給与が支払われているなら、雇用主は勤務先の病院です。退職の申し出も、その病院に対して行います
- 大学病院に勤務している場合 — 大学(大学病院を設置する法人)と労働契約を結んでいるなら、雇用主は大学です
- 非常勤・兼業先 — 勤務先ごとに契約があります。雇用か業務委託かで扱いが違うため、医師の非常勤は雇用か業務委託かも参考にしてください
手元の労働条件通知書・雇用契約書と給与明細で、契約の相手と契約期間(期間の定めがあるか)を確かめておきます。医局をやめても勤務先との契約がすぐに終わるわけではなく、逆に勤務先を辞めることを医局に伝えただけでは、勤務先との契約は終わりません。
退職の申し出は法律上いつまで?
勤務先との雇用を終えるときのルールは次のとおりです。
- 期間の定めのない雇用 — いつでも解約の申し入れができ、申し入れの日から2週間で雇用は終了します(民法第627条)[3]。厚生労働省のサイトは、使用者が退職を認めないと言っても、この原則は変わらないとしています[4]
- 期間の定めのある雇用(1年契約など) — 契約期間の途中で辞めるには「やむを得ない事由」が必要です(民法第628条)[3]。契約の満了に合わせて辞めるのが基本になります
- 就業規則 — 常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則に「退職に関する事項」を定めます(労働基準法第89条)[2]。厚生労働省のサイトは、就業規則の退職手続も確認し、ルールを守って手続きをすることがトラブル防止に重要だとしています[4]
同じサイトでは、会社の承諾を前提にする「退職願」と、一方的に退職を申し入れる「退職届」は効果が違い、退職願は承諾されるまで撤回できると説明しています[4]。退職日を確実に決めたいときは、話し合いの結果をふまえて退職届を出し、記録を残します。
法律上の最短期間とは別に、医師の場合は外来の担当枠、当直表、担当患者の引き継ぎ、後任の調整に時間がかかります。人事の時期や決め方は医局・病院ごとに違うため、辞めたい時期より十分前に相談を始めると、関係者が調整しやすくなります。
誰に、どう切り出す?

切り出す順番に決まりはありませんが、医局の人事で今の勤務先にいる場合は、医局と勤務先の両方に関わる話になります。一般的には、次の順に進めると行き違いが起きにくくなります。
- 教授・医局長に面談を申し込む — 「今後の進路についてご相談したいことがあります」と、落ち着いて話せる時間をとってもらいます
- 勤務先の上司(部長・院長)に伝える — 退職の希望日と、外来・当直・引き継ぎの段取りを相談します
- 専門研修中ならプログラム統括責任者に — 研修の扱い(辞退・中断・移動)を相談します(次の節)
- 退職届と引き継ぎ — 退職日が決まったら書面で残し、担当患者・外来・委員会の役割を引き継ぎます
理由は、うそをつかずに短く、これからしたいことの形で伝えます。医局や勤務先への不満を並べると、話がこじれやすくなります。
伝え方の例(見本)
お時間をいただき、ありがとうございます。 今後の働き方を考え、○年○月末で医局を離れたいと考えております。 地域の外来診療に長く関わりたいと考え、次の勤務先を探しています。 これまでご指導いただいたことに感謝しております。 現在の病院での引き継ぎと、外来・当直の調整は責任をもって行いますので、時期についてご相談させてください。
以上は伝え方の見本です。理由や時期は自分の状況に合わせてください。引き止められたときの考え方や、有給休暇・退職時に受け取る書類は、看護師の退職の伝え方で説明している内容が医師にもほぼそのまま当てはまります。
専門医の研修プログラムはどうなる?
専攻医の場合、退局は専門研修の扱いにも関わります。日本専門医機構の専攻医向けの案内(2026年10月時点)で確認できる範囲は次のとおりです[5][6]。
- 年度途中の転科はできない — 他の領域に移る場合は、改めて専攻医募集に応募する必要があり、研修の開始は最短で翌年度の4月です
- 二つのプログラムに同時に所属できない — 別のプログラムに応募するには、今のプログラムの辞退手続きを終えておく必要があります。手続きは、プログラム統括責任者と領域学会の了承を得たうえで機構に連絡するよう案内されています
- 締め切りがある — 2026年10月21日のお知らせでは、中断して転科を希望する専攻医の連絡期限を、1次募集は2026年11月6日、2次募集は12月4日、最終調整期間は2027年1月15日としています。辞退手続きには時間がかかり、直前の連絡には対応できないことがあるとされています
- カリキュラム制 — 原則はプログラム制ですが、出産・育児・介護・療養などで休職・離職した後に研修へ復帰する医師は、カリキュラム制への移行を選べる場合があります。対象条件は領域によって違います
研修の扱いは、領域やプログラムの規定によって変わります。退局の時期を決める前に、プログラム統括責任者と領域学会に確認し、日本専門医機構の最新のお知らせも見ておきます。すでに専門医を取得している場合は、新しい勤務先で、日本専門医機構や学会が定める更新の基準を満たし続けられるかも確かめておきます。
なお、医業を行うのに必要なのは医師免許で(医師法第17条)[7]、専門医の資格は法律上の要件ではありません。ただし、応募先によっては資格を条件にしていることがあるため、採用ページの記載を確かめます。
退局後の職場はどう探す?
退局後の働き方は、常勤(病院・クリニック)、定期の非常勤の組み合わせ、大学以外の研修施設でのプログラム継続など、人によって違います。探し方にはいくつかの経路があり、併用できます。
- 病院・クリニックの採用ページから直接連絡する — 採用直行便の医師向けページでは、採用ページに医師の募集の記載がある医療機関を地域ごとに見られます。見学や面談を申し込み、条件は書面で確かめます
- 公的な無料の窓口 — 日本医師会ドクターバンク、自治体病院・診療所 医師求人求職支援センターなど(医師の直接応募ガイドにまとめています)
- 紹介会社 — 条件の交渉や日程の調整を任せたい場合に使う方法です
面接で聞かれることや確かめたいことは医師の転職の面接で聞かれること・確かめること、勤務地が変わるときの保険医登録や麻薬施用者免許の手続きは医師の引っ越し・異動の手続きにあります。
話がこじれたときの相談先は?
退職日を認めてもらえない、手続きを進めてもらえないなど、勤務先との話し合いで解決しないときは、都道府県労働局や労働基準監督署などにある総合労働相談コーナーに相談できます。予約不要・無料で、労働者・事業主のどちらの相談も受け付けています[8]。専門研修に関わる相談は、日本専門医機構の専攻医向けページに相談窓口の案内があります[5]。
参考資料(確認日 2026年10月24日)
- 労働契約法 第2条・第6条(e-Gov法令検索) 法律
- 労働基準法 第15条・第89条(e-Gov法令検索) 法律
- 民法 第627条・第628条(e-Gov法令検索) 法律
- 厚生労働省「確かめよう労働条件 — 退職、解雇、雇止めなど」 ページ
- 一般社団法人日本専門医機構「専攻医の方」 ページ/「よくある質問(専攻医)」 ページ
- 一般社団法人日本専門医機構「研修中プログラムを中断し、転科をご希望の専攻医のみなさまへ」(2026年10月21日) ページ
- 医師法 第17条(e-Gov法令検索) 法律
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 ページ
よくある質問
医局を辞めると、今の勤務先の病院も辞めなければいけませんか?
医局をやめることと、勤務先との雇用契約を終えることは別の手続きです。今の病院と労働契約を結んでいるなら、その契約を続けるか終えるかは、病院との話し合いと就業規則・契約の内容で決まります。関連病院に赴任している場合は、医局と勤務先の両方と時期を相談しておくと行き違いを防げます。
退職は何か月前に伝えればいいですか?
期間の定めのない雇用は、法律上は申し入れから2週間で終了します(民法第627条)。ただし就業規則に申し出の時期が定められていることが多いので、まず就業規則を確認し、外来や当直の調整、引き継ぎに必要な期間を見込んで早めに伝えます。
専門研修の途中で辞めたら、専門医はとれなくなりますか?
一律には決まりません。日本専門医機構は、年度途中の転科は認めておらず、他の領域に移る場合は改めて専攻医募集に応募し、翌年度の4月から研修を始めると案内しています。出産・育児・介護・療養などで離れた後に復帰する場合は、カリキュラム制を選べることがあります。条件は領域によって違うため、プログラム統括責任者と領域学会に確認してください。
専門医を取らずに働くことはできますか?
医業を行うのに必要なのは医師免許で(医師法第17条)、専門医の資格は法律上の要件ではありません。ただし、応募先によっては専門医の資格や研修中であることを条件にしていることがあるため、採用ページの記載を確かめてください。
退局の挨拶はメールで送ってもいいですか?
教授や医局長、勤務先の上司には、まず直接(難しければ電話で)伝えるのが一般的です。退局が正式に決まった後、お世話になった先生方への挨拶をメールで送るのは構いません。挨拶では辞める理由を詳しく書かず、お礼と今後の連絡先を短く伝えます。
次の職場は、公式採用ページから直接応募
採用直行便は、全国の病院・クリニックが自ら公開している公式採用ページを、市区町村・診療科・最寄り駅から探せる無料のサイトです。会員登録は要りません。紹介会社を通さずに応募すると、採用する医療機関に紹介手数料の負担がかかりません。
この記事は一般的な情報提供です。制度・料金・サービス内容は変わることがあります。手続きや申し込みの前に、必ず各機関・各社の公式情報をご確認ください。