転職で保険の見直しは必要?団体保険・付加給付と看護師の賠償責任保険の確認点

公開 2026年10月30日・最終更新 2026年10月30日

結論:転職のときに確かめたい保険は3種類です。①勤務先を通じて入っていた団体保険・共済は、退職で原則として終わります。②健康保険は加入先が変わり、健康保険組合ごとの付加給付(法定給付への上乗せ)の有無も変わります。③医療職は、賠償責任保険が勤務先の保険でどこまで対象になるか、個人で入っている団体の保険の手続きが要るかを確かめます。民間の保険を見直すのは、公的な保障と勤務先の制度を確かめたあとにします。

転職すると、どの保険が変わる?

保険の書類を広げる

転職で影響を受ける保険は、入り方によって次の3つに分けられます。

入り方例転職のときに起こること
法律で入る保険健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)、厚生年金、雇用保険加入先が転職先のものに変わる。空白期間は国民健康保険・国民年金などに切り替え
勤務先を通じて入る保険団体定期保険、団体の医療保険、職員の互助会・共済、勤務先が契約する賠償責任保険退職で原則として終わる。続けられるか・個人の保険に移れるかは制度ごとに違う
個人で入る保険個人で契約した生命保険・医療保険、職能団体の会員向け保険契約は続く。保険料を給与から引いていた場合や、会員資格が条件の保険は手続きが要ることがある

健康保険の切り替えそのもの(任意継続か国民健康保険か、手続きの期限)は、空白期間の健康保険と任意継続と国民健康保険の比較にまとめています。この記事では、それ以外の「保障の中身」に絞って見ていきます。

勤務先の団体保険・共済は退職でどうなる?

団体定期保険は、企業などの団体が契約者になり、従業員など団体に所属する人が加入する保険です。保険期間は1年で、団体に所属している間は毎年更新されます。団体に所属しなくなると、原則として保障は終わります。ただし、一定の年齢まで更新できる場合や、一定の個人向け生命保険に契約できる場合もあります[1]。

団体保険は、個人で入るより保険料が割安になる傾向があり、給与から天引きされるため、加入していることを忘れやすい保障でもあります。一方で、付けられる特約に制限があり、加入や見直しは年1回など決まった時期にしかできないことが多いとされています[1][2]。退職前に次の点を確かめておきます。

  • 何に入っているか — 給与明細の控除欄で、団体保険・互助会費・共済掛金などの名目を確認します
  • いつ終わるか — 退職日で終わるのか、月末や保険期間の終わりまで続くのか
  • 続ける方法があるか — 退職者向けの継続制度や、個人の保険に移る制度があるか。申し込みの期限はいつか
  • 家族の分 — 配偶者や子どもも一緒に入っていた場合、家族の保障も同時に終わることがあります

転職先にも団体保険がある場合は、加入できる時期が年1回などに限られていることがあります。前の保障が終わってから次の保障が始まるまでに空白ができないか、入職時の説明で確かめます。

健康保険の付加給付は転職先で変わる?

変わることがあります。健康保険組合は、規約で定めるところにより、法律で決まった保険給付に併せて、その他の給付を行うことができます(健康保険法第53条)[3]。これを付加給付といいます。条文は保険者が健康保険組合である場合の規定で、内容は組合ごとの規約で決まります。

  • 前の職場の健康保険で付加給付があった人 — 転職先の健康保険(協会けんぽ・別の健康保険組合)では、同じ上乗せがないことがあります。医療費の自己負担の見込みが変わるので、民間の医療保険を考えるときの前提になります
  • 確かめ方 — 健康保険組合のホームページや、加入時に配られる案内で「付加給付」「一部負担還元金」などの項目を確認します。転職先が加入している健康保険の種類は、入職時の書類や面接で確かめられます

民間の保険を考える前に、公的な保障はどこまである?

病気やけがへの備えは、健康保険の給付が土台になります。転職のときは、次の2つを確かめておくと、民間の保険で備える部分を考えやすくなります。

高額療養費

医療機関や薬局の窓口で払った医療費が、年齢と所得に応じた月ごとの上限額を超えた場合、超えた分が支給されます。直近12か月に3か月以上該当すると、4か月目から上限額が下がる「多数回該当」もあります。厚生労働省は、2026年(令和8年)8月から月ごとの上限額を見直し、8月から翌年7月までの「年間上限」を新しく設けたと案内しています。2027年(令和9年)8月からは所得区分の細分化も予定されています[4]。自分の上限額は、加入している健康保険で確かめます。

傷病手当金

協会けんぽなどの健康保険では、業務外の病気やけがで仕事に就けず給与が出ないとき、休み始めて連続3日の待期のあと4日目から傷病手当金が出ます。1日あたりの額は、直近12か月の標準報酬月額の平均の30分の1の3分の2で、支給期間は支給開始日から通算1年6か月です[5]。

  • 任意継続の期間中に始まった病気・けがは、傷病手当金の対象になりません[5]
  • 退職後も受けられる場合 — 資格を失う日の前日までに被保険者期間が継続して1年以上あり(任意継続・共済組合・国民健康保険の期間を除く)、その日に傷病手当金を受けているか受けられる状態であれば、退職後も続けて受けられます[5]

転職の直前・直後に体調を崩しそうなときや、空白期間を任意継続で過ごすときは、この扱いを知っておくと、民間の保険で何に備えるかを考えやすくなります。

医療職の賠償責任保険は、加入先を確かめた?

白衣と書類

医療職は、業務中の事故で賠償を求められたときの備えとして、勤務先が契約する保険のほかに、職能団体の会員向けの保険に個人で入っていることがあります。転職のときは、次の順で確かめます。

  1. 転職先の保険の範囲 — 勤務先が入っている賠償責任保険が、病院・クリニックとしての責任だけでなく、職員個人が賠償を求められた場合も対象にしているか。入職時に確かめます
  2. 個人で入っている保険の条件 — 会員であることや、特定の職種・勤務形態であることが加入の条件になっていないか。退職や休職で条件が変わる場合は、保険の窓口に確かめます
  3. 更新の時期 — 年度ごとの更新か、自動更新か

看護職の場合 — 日本看護協会の看護職賠償責任保険制度

日本看護協会は、会員特典の一つとして「会員限定の看護職賠償責任保険制度に加入できる」と案内しています。入会は看護職であればだれでもできます[6]。2026年度の掛金は2,650円、補償期間は2026年4月1日16時から2027年4月1日16時までで、自動更新ではなく毎年手続きが必要です。申込みはWeb(クレジットカード払い)か郵便振替用紙で行います[7]。補償の内容や手続きの詳細は、日本看護協会の制度のページから案内されている専用ページで確認できます[8]。

勤務先が変わっても、看護職としての個人の保険であれば、会員の継続と年度ごとの手続きで続けられるかが確認の中心になります。転職で一時的に看護職として働かない期間がある場合の扱いは、制度の窓口に問い合わせてください。

医師の場合 — 日本医師会医師賠償責任保険

日本医師会医師賠償責任保険は、日本医師会が契約者となり、A会員(A①・A②(B)・A②(C))全員を対象とする制度で、個別の加入手続きは不要とされています。支払限度額は1事故1億円・保険期間中3億円で、免責金額は1事故100万円です。開設者・管理者としての責任や高額な賠償に備える任意加入の特約保険もあります[9]。会員区分は勤務先や立場が変わると変わることがあるので、異動のときは所属する医師会で確かめます。医師の異動に伴う届出は医師が引っ越す・異動するときの手続きにまとめています。

医療事務などの職種でも、勤務先が入っている保険の範囲と、個人情報の取り扱いに関する院内の決まりを、入職時に確かめておきます。

保険を見直すときの順番は?

  1. 公的な保障を確かめる — 転職先の健康保険の種類(付加給付の有無)、高額療養費の上限額、傷病手当金の扱い
  2. 勤務先の制度を確かめる — 退職で終わる団体保険・共済、転職先にある団体保険と加入できる時期、賠償責任保険の範囲
  3. 足りない部分を考える — 家族構成と貯蓄から、病気やけがで収入が減ったとき・亡くなったときに必要な額を考えます
  4. 契約を変えるときは順番を守る — 新しい保険は健康状態の告知が必要で、入れないこともあります。乗り換える場合は、新しい契約が成立してから古い契約をどうするか決めます
  5. 契約後に迷ったら — 生命保険の契約は、書面の交付日と申込日のいずれか遅い日から8日以内なら、書面または電磁的記録で申込みを撤回できるのが原則です。保険期間1年以下の契約などは対象外です(保険業法第309条)[10]。医師の診査を受けた契約も対象外で、期間を延ばしている会社もあります[11]。なお、勤務先の団体定期保険はクーリング・オフの対象外とされています[2]

保険の見直しを相談したいときは?

保険料や給付の条件そのものは、加入している健康保険・保険会社・勤務先で確かめるのが確実です。そのうえで、家計全体の中で保障をどうするかを人と一緒に整理したい場合は、家計の相談サービスを使う方法もあります[12]。無料の公的窓口も含めた相談先の選び方と、勧誘への注意は転職のときのお金の相談先にまとめています。

次の職場の福利厚生は採用ページと面接で確かめる

団体保険や賠償責任保険、加入する健康保険の種類は、採用ページの福利厚生の欄に書かれていることもあります。採用直行便の条件から探すでは、地域の病院・クリニックの公式採用ページを一覧で見られます。書かれていない項目は、面接や入職前の説明で直接確かめてください。

参考資料(確認日 2026年10月24日・25日)

  1. 公益財団法人生命保険文化センター「団体定期保険(任意加入)」 https://www.jili.or.jp/knows_learns/kind/others/9193.html
  2. 公益財団法人生命保険文化センター「『団体定期保険』について知っておきたいこと」(2025年4月22日) https://www.jili.or.jp/kuraho/essay/2025/9991.html
  3. 健康保険法 第53条(e-Gov法令検索) 法律
  4. 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(2026年7月31日更新) ページ
  5. 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
  6. 公益社団法人日本看護協会「入会のご案内」 https://www.nurse.or.jp/nursing/promote/nyukai/index.html
  7. 公益社団法人日本看護協会「2026年度『看護職賠償責任保険制度』更新手続きの受け付けを開始しました。」 https://www.nurse.or.jp/news/baiseki_20251215.html
  8. 公益社団法人日本看護協会「看護職賠償責任保険制度」 https://www.nurse.or.jp/nursing/anzen/insurance/index.html
  9. 公益社団法人日本医師会「日本医師会医師賠償責任保険制度」 https://www.med.or.jp/doctor/sonota/sonota_etc/003368.html
  10. 保険業法 第309条(e-Gov法令検索) 法律
  11. 公益財団法人生命保険文化センター「契約申込みから契約成立までの流れと重要事項」 https://www.jili.or.jp/knows_learns/basic/point/18.html
  12. All About家計相談所(株式会社オールアバウト) https://allabout.co.jp/product/105972/money-plan.html

よくある質問

勤務先の団体保険は退職したらどうなりますか?

団体定期保険は勤務先などの団体が契約者で、保険期間は1年、団体に所属している間は毎年更新されます。団体に所属しなくなると、原則として保障は終わります。一定の年齢まで続けられる場合や、一定の個人向け生命保険に契約できる場合もあるので、退職前に勤務先の担当部署か保険会社に確かめます。

健康保険の付加給付とは何ですか?

健康保険組合が、規約で定めるところにより、法律で決められた給付に上乗せして行う給付です(健康保険法第53条)。たとえば医療費の自己負担の一部を払い戻す仕組みなどがあり、組合ごとに有無も内容も違います。転職で加入先が変わると、付加給付の有無も変わることがあります。

看護師の賠償責任保険は個人で入る必要がありますか?

必要かどうかは一律には言えません。勤務先が加入している保険が、個人が賠償を求められた場合まで対象にしているかは勤務先ごとに違うため、まず勤務先に確かめます。日本看護協会の看護職賠償責任保険制度は会員限定の団体契約で、自動更新ではなく毎年手続きが必要です。

転職のタイミングで民間の医療保険は見直すべきですか?

見直すかどうかは家計と保障の状況によります。まず、高額療養費や傷病手当金など健康保険の公的な保障と、勤務先の団体保険が退職で終わるかを確かめ、足りない部分があるかを考えます。乗り換える場合は、新しい契約が成立してから古い契約をどうするか考えます。

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