任意継続と国民健康保険はどっちが安い?退職後の保険料の比べ方とデメリット
次の職場まで数日〜1か月程度の空白なら、手続きの選び方は転職の空白期間の健康保険にまとめています。この記事は、退職後しばらく働かない人や、保険料をきちんと比べたい人向けです。
退職後の健康保険は何から選べる?

職場の健康保険は退職日の翌日に資格を失います。そのあとは次の3つから選びます[1]。
| 選択肢 | 保険料 | 期限・期間 | 手続き先 |
|---|---|---|---|
| 任意継続(前の健康保険を個人で続ける) | 退職時の標準報酬月額×保険料率の全額 | 退職日の翌日から20日以内に申出。最長2年 | 前の健康保険(協会けんぽは住所地の都道府県支部) |
| 国民健康保険 | 前年の所得と加入者数で計算(市区町村ごと) | 14日以内に届出 | 住所地の市区町村 |
| 家族の健康保険の被扶養者 | かからない | 家族の勤務先の案内による | 家族の勤務先 |
任意継続に入れるのは、退職日までに継続して2か月以上被保険者だった人です[1]。
任意継続の保険料はどう決まる?
協会けんぽの任意継続の保険料は「退職時の標準報酬月額 × 住所地の都道府県の保険料率」で、保険料率には子ども・子育て支援金率が含まれます。40〜64歳の人は介護保険料も加わります[1]。
- 全額自分で払う — 在職中は保険料の半分を事業主が負担しますが、任意継続はその全額を負担します(健康保険法第161条)[2]。そのため在職中の約2倍になります
- 上限がある — 退職時の標準報酬月額が32万円を超える人は、32万円で計算します[1]。法律上は「退職時の標準報酬月額」と「前年(1〜3月分は前々年)9月30日の全被保険者の標準報酬月額の平均」の低いほうを使う決まりです(同法第47条)[2]
- 原則2年間変わらない — 保険料率が変わったとき、40歳・65歳になったとき、保険料率の違う都道府県に引っ越したときなどは変わります[1]
- 前納で割引 — 6か月分・12か月分をまとめて払うと割引になります[1]
健康保険組合の任意継続は、上限の決め方などを規約で定められるため(同法第47条第2項)[2]、加入していた組合に確認します。
計算の見本(協会けんぽ・東京都・40歳未満)
令和8年度の東京都の健康保険料率は9.85%、子ども・子育て支援金率は0.23%です(任意継続は2026年4月分から)[3]。以下は計算の仕方を示す見本で、仮の数字です。
| 退職時の標準報酬月額(仮) | 計算に使う額 | 月の保険料(見本) |
|---|---|---|
| 26万円 | 26万円 | 26万円 ×(9.85%+0.23%)= 26,208円 |
| 40万円 | 32万円(上限) | 32万円 ×(9.85%+0.23%)= 32,256円 |
40〜64歳は介護保険料率1.62%が加わります[3]。実際の額は協会けんぽの通知で確認してください。
国民健康保険の保険料はどう決まる?
国民健康保険料(市区町村によっては国民健康保険税)は、世帯単位で、区分ごとの「所得割(所得に応じた額)」と「均等割(加入者1人あたりの額)」を足して計算します。料率は市区町村ごとに違います。例として、新宿区の令和8年度の料率は次のとおりです[4]。
| 区分 | 均等割(1人あたり) | 所得割率 | 上限(賦課限度額) |
|---|---|---|---|
| 医療分 | 47,600円 | 7.51% | 67万円 |
| 後期高齢者支援金分 | 17,600円 | 2.80% | 26万円 |
| 介護分(40〜64歳) | 17,800円 | 2.43% | 17万円 |
| 子ども・子育て支援金分(均等割は18歳以上) | 1,873円 | 0.27% | 3万円 |
- 前年の所得で決まる — 令和8年度の所得割は、令和7年中の総所得金額等から基礎控除43万円を引いた額(算定基礎額)に料率をかけます[4]。退職した年度は、在職中の所得がもとになります
- 人数で増える — 均等割は加入者ごとにかかります。任意継続のように「扶養家族の分は保険料なし」という仕組みではありません
計算の見本(新宿区・39歳以下・単身)
算定基礎額(前年の総所得金額等−43万円)が仮に250万円の場合の見本です[4]。
| 区分 | 計算 | 年額(見本) |
|---|---|---|
| 医療分 | 47,600円+250万円×7.51% | 235,350円 |
| 後期高齢者支援金分 | 17,600円+250万円×2.80% | 87,600円 |
| 子ども・子育て支援金分 | 1,873円+250万円×0.27% | 8,623円 |
| 合計 | 331,573円(月あたり約2.8万円) |
所得の少ない世帯の均等割の軽減、未就学児の均等割の5割軽減などは入れていません。住所地の市区町村の料率と通知で確認してください。
会社都合などで辞めたら国保は安くなる?
倒産・解雇などで離職した人(雇用保険の特定受給資格者)や、雇止めなどで離職した人(特定理由離職者)で、離職日時点で65歳未満の人は、前年の給与所得を30/100とみなして国民健康保険料を計算する軽減があります[5][6]。
- 対象の確認 — 雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)の離職理由コードが 11・12・21・22・31・32(特定受給資格者)、23・33・34(特定理由離職者)[5]
- 軽減されるのは給与所得だけ — ほかの所得は軽減の対象外です[5]
- 期間 — 離職日の翌日の属する月から、その月の属する年度の翌年度末まで。失業手当を受ける期間とは別です[5][6]
- 途中で就職したら — 国民健康保険に入っている間は続きますが、職場の健康保険に入って国保をやめると終わります(千葉市の案内)[6]
- 手続き — 受給資格者証などと本人確認書類を持って市区町村に届け出ます。自動では適用されません
自己都合退職は、この軽減の対象になりません(特定理由離職者に当たる場合を除く)。
任意継続と国保、どっちが安いかを比べる手順は?

- 任意継続の額を出す — 退職時の標準報酬月額(給与明細や前の勤務先で確認)× 都道府県の保険料率。協会けんぽなら上限32万円で計算。家族を扶養に入れても保険料は変わりません
- 国保の見込み額を聞く — 住所地の市区町村の国保の窓口で、前年の所得と加入する家族の人数を伝えて試算してもらいます。源泉徴収票があると話が早いです
- 軽減が使えるか確かめる — 会社都合・雇止めなら非自発的失業者の軽減、所得が少なければ均等割の軽減が使えるか
- 2年目も考える — 国保は毎年度、前年の所得で計算し直されます。退職した翌年に収入が少なければ、2年目の国保は下がることがあります。任意継続は原則2年間同じです
- 家族の扶養に入れないか確認 — 入れるなら保険料はかかりません(次の見出し)
任意継続の申出は20日以内なので、退職前から両方の額を調べておくと間に合います。
任意継続のデメリット・注意点は?
- 保険料を1日でも遅れると資格を失う — 保険料は毎月10日までに納めます[1]。納付期日までに納めないと、その翌日に資格を失います(健康保険法第38条第3号)。初めての保険料を期日までに納めないと、任意継続にならなかったものとみなされます(同法第37条第2項)[2]
- 傷病手当金・出産手当金は原則出ない — 任意継続の期間中に起きた病気・けが・出産による傷病手当金と出産手当金は支給されません。在職中から受けていて継続して受ける場合だけ申請できます[1]
- 保険料は全額自己負担 — 在職中の約2倍になります[1]
- 20日の期限 — 期限を過ぎると原則入れません[2]
反対に、任意継続は在職中と同じ窓口負担で受診でき、保険料のかからない被扶養者を続けられます[1]。家族が多い人ほど、国保の均等割との差を確かめる価値があります。
途中で任意継続から国保に切り替えられる?
できます。任意継続をやめたいと保険者に申し出ると、申出が受理された日の属する月の末日が過ぎた翌日に資格を失います(健康保険法第38条第7号)[2]。協会けんぽでは「資格喪失申出書」を出します[1]。そのあと14日以内に、市区町村で国民健康保険に入ります。
たとえば、1年目は任意継続のほうが安く、2年目は前年の所得が下がって国保のほうが安くなる、という場合に使えます。切り替える前に、国保の見込み額を市区町村で確かめてください。
家族の扶養に入る選択肢は?
家族が職場の健康保険に入っていて、主にその家族の収入で生活しているなら、被扶養者になれる場合があります。被扶養者の保険料はかかりません。協会けんぽ・日本年金機構の案内では、収入の目安は次のとおりです[7][8]。
- 年間収入130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満。2025年10月1日以降、19歳以上23歳未満の人は150万円未満。配偶者を除く)
- 同居なら扶養する人の収入の半分未満、別居なら仕送り額未満
- 見込みで判断 — 年間収入は過去の収入ではなく、被扶養者に当たる時点以降の1年間の見込みです
- 失業手当も収入に入る — 雇用保険の受給者は日額3,611円以下なら要件を満たし、日額3,612円以上の基本手当の支給が始まったら扶養から外す届出が必要です。待期期間中は、収入要件を満たせば認定されます[8]
健康保険組合では扱いが違うことがあるため、家族の勤務先を通じて確認します。扶養から外れた期間は、任意継続か国保に入ります。
退職後の家計をまとめて見直したいときは?
退職後は、健康保険料に加えて国民年金保険料や前年の所得に対する住民税の支払いが重なります(空白期間の年金、退職した年の住民税)。保険料の額そのものは保険者や市区町村が決めるので、まずそちらに確認します。そのうえで、毎月の支出の配分を見直したい人は、家計の相談サービスを使う方法もあります[9]。
次の職場が決まったら
新しい職場の健康保険に入ると、任意継続は資格を失います。協会けんぽに資格喪失の申し出をし、資格確認書を返します[1]。国保の人は、市区町村に脱退の届出をします。
次の職場を探すときは、採用直行便の条件から探すで、地域の病院・クリニックの公式採用ページを一覧で見られます。健康保険の種類(協会けんぽか健康保険組合か)や入職日は、面接や労働条件通知書で確かめておくと、手続きの段取りが立てやすくなります。
参考資料(確認日 2026年10月24日)
- 全国健康保険協会「任意継続」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/voluntary_continuation/index.html
- 健康保険法 第37条・第38条・第47条・第161条(e-Gov法令検索) 法律
- 全国健康保険協会「令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/insurance_rate/rate_prefectures/r08/index.html
- 新宿区「保険料の計算方法について」 https://www.city.shinjuku.lg.jp/hoken/hoken01_001028.html
- 新宿区「非自発的失業者の国民健康保険料の軽減」 https://www.city.shinjuku.lg.jp/hoken/hoken02_000102.html
- 千葉市「非自発的失業者の保険料を軽減」 https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/iryoeisei/hoken/hijihatsutekishitugyo.html
- 全国健康保険協会「被扶養者資格の再確認について(よくあるご質問)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/faq/dependent_status/
- 日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20141202.html
- All About家計相談所(株式会社オールアバウト) https://allabout.co.jp/product/105972/money-plan.html
よくある質問
任意継続と国民健康保険は、どっちが安いですか?
人によって違います。任意継続は退職時の標準報酬月額(協会けんぽは32万円が上限)に保険料率をかけた額を全額自分で払い、原則2年間変わりません。国民健康保険は前年の所得と世帯の加入者数で決まり、市区町村ごとに料率が違います。前の健康保険と住所地の市区町村の両方に見込み額を聞いて比べるのが確実です。
任意継続から国民健康保険に途中で切り替えられますか?
できます。任意継続をやめたいと保険者に申し出ると、申出が受理された日の属する月の末日が過ぎた翌日に資格を失います(健康保険法第38条第7号)。その後、市区町村で国民健康保険に加入します。
任意継続の申出期限を過ぎたらどうなりますか?
申出は資格を失った日から20日以内です。保険者が正当な理由があると認めたときは期限後でも受理できるとされていますが(健康保険法第37条)、原則は20日以内に出します。協会けんぽでは20日目が土日・祝日なら翌営業日まで、郵送は20日以内に必着です。
失業手当を受けていても家族の扶養に入れますか?
失業手当(雇用保険の基本手当)も年間収入に含まれます。日本年金機構は、雇用保険の受給者は日額3,611円以下なら年収130万円未満の要件を満たすとし、日額3,612円以上の基本手当の支給が始まったら扶養から外す届出が必要と案内しています。待期期間中は収入要件を満たせば認定されます。
会社都合で辞めた場合、国民健康保険料は安くなりますか?
倒産・解雇などによる離職(特定受給資格者)や雇止めなど(特定理由離職者)で、離職時65歳未満の人は、前年の給与所得を30/100とみなして保険料を計算する軽減があります。期間は離職日の翌日の属する月から、その翌年度末までです。雇用保険受給資格者証などを持って市区町村に届け出ます。
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