転職・退職した年のふるさと納税|控除上限の計算とワンストップ特例の注意点
転職・退職した年もふるさと納税はできる?

できます。ふるさと納税は、自治体に寄附をすると、寄附額のうち2,000円を超える部分が、一定の上限まで所得税と住民税から原則として全額控除される制度です[2]。転職や退職をしたかどうかは、寄附そのものの条件に関係しません。
気をつけるのは次の2点です。
- 上限額 — その年の所得で決まるので、年収が変わる年は見込みがずれやすい
- 控除の受け方 — 年末調整で済むか、確定申告が必要になるかで、ワンストップ特例を使えるかが変わる
控除の上限は何で決まる?
控除額は3つに分かれます。総務省の計算式は次のとおりです[1]。
| 控除 | 計算式 | 控除対象の上限 |
|---|---|---|
| 所得税 | (寄附額−2,000円)× 所得税の税率 | 総所得金額等の40% |
| 住民税(基本分) | (寄附額−2,000円)× 10% | 総所得金額等の30% |
| 住民税(特例分) | (寄附額−2,000円)×(100%−10%−所得税の税率) | 住民税所得割額の2割まで |
2,000円を除いて全額が控除されるかどうかは、多くの場合特例分が「住民税所得割額の2割」を超えないかで決まります。超えると、3つを合計しても全額は控除されず、自己負担が2,000円を超えます[1]。なお、所得税の税率には、寄附の年が令和19年までは復興特別所得税の分が加わります[1]。
住民税の所得割は前年の所得に対してかかります[10]。つまり、今年の寄附の上限を決めるのは「今年の所得で計算される、来年度の住民税の所得割額」です。今年の給与明細から引かれている住民税(前年の所得の分)とは別物なので、取り違えないようにします。
上限の目安の計算(見本)
上の式から、全額控除となる寄附額の上限の目安は次のように求められます。
上限の目安 = 住民税所得割額 × 20% ÷(90% − 所得税の税率 × 1.021)+ 2,000円
たとえば、来年度の住民税所得割額が仮に20万円、所得税の税率が5%なら、20万円×20%÷(90%−5.105%)+2,000円 ≒ 約4.9万円です。これは計算の仕方を示す見本です。特例分の計算に使う所得税の税率は住民税の課税所得から求めるため、実際の所得税の税率と違う場合があります[1]。具体的な上限額は、お住まいの市区町村の住民税の担当部署に問い合わせるよう総務省は案内しています[4]。
転職・退職した年の上限はどう見積もる?
上限を左右する所得は、1月から12月までにすべての勤務先から受け取った給与の合計がもとになります。転職した年は、次のように分けて見積もります。
- 前の職場の分 — 退職時に受け取る源泉徴収票の「支払金額」
- 新しい職場の分 — 入職から12月までの給与と、年内に支給される賞与の見込み(労働条件通知書や就業規則で確認)
- そのほか — 扶養家族の変化、医療費控除・住宅ローン控除など、住民税の所得割額を変える事情
見込みが立ちにくい年は、新しい職場の給与が何か月分か出て、年収の見当がついてから寄附すると、上限を超えるおそれを減らせます。年の途中で退職して年内に働かない場合は、その年の給与が少なくなるため、前の年と同じ感覚で寄附すると上限を超えることがあります。
退職金を受け取った人は、退職金の税金の仕組みが給与と別です(退職金の税金の計算方法)。上限への影響が気になるときは、市区町村に確認してください。
ワンストップ特例は転職しても使える?

使えます。ワンストップ特例は、確定申告の不要な給与所得者等で、その年のふるさと納税先が5団体以内の場合に、寄附先の自治体に申請するだけで確定申告をしなくてよくなる仕組みです[1][3]。転職したかどうかは条件にありません。
- 申請書は寄附先ごとに — ふるさと納税を行う際に、各寄附先に申請書を出します[3]。払込票の「申請書の送付を希望」に印を付けただけでは申請になりません[4]
- 提出期限 — 自治体の案内では、寄附をした年の翌年1月10日必着です[6]
- 控除のされ方 — 所得税からは控除されず、その分も含めて全額が翌年度の住民税から控除されます(翌年6月以降に払う住民税の減額)[1][3]
転職した年にワンストップ特例を使うための条件
ポイントは、新しい勤務先の年末調整で所得税の精算が終わることです。年の途中で就職した人は、前の職場の給与も含めて年末調整を受けます。そのために、前の職場の源泉徴収票を新しい勤務先に出します。確認できないときは年末調整ができず、確定申告で精算することになります[8]。
地方税法では、申請をした人が確定申告や住民税の申告をしたとき、寄附先が5団体を超えたときなどは、申請はなかったものとみなされると定めています(地方税法附則第7条)[5]。この場合は確定申告で寄附金控除を申告します[3]。
確定申告が必要になるのはどんなとき?
転職・退職した年に、次のどれかに当てはまると確定申告をすることになり、ふるさと納税も確定申告に含めます。寄附先の自治体が出す受領証明書を使います[1]。
- 年末調整を受けられなかった — 前の職場の源泉徴収票を出さなかった、12月の時点で勤務先に在籍していない(年の途中で退職した人は、一部の場合を除き年末調整の対象になりません[9])など。確定申告で所得税を精算します
- 2か所以上から給与を受けた — 年末調整されなかった給与の収入と、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える場合などは、確定申告が必要です[7]
- 医療費控除などを申告する — 確定申告をする人は、ワンストップ特例の対象外です[6]
- 寄附先が6団体以上 — 特例を申請していても確定申告が必要です[6]
確定申告の期限は、寄附をした翌年の3月15日です[1]。確定申告をすると、所得税分はその年の所得税から控除(還付)され、住民税分は翌年度の住民税から控除されます[1]。
年内に働かない人は確定申告をする?
年の途中で退職し年末調整を受けていない人は、所得税を納めすぎている場合があり、確定申告(還付申告)で取り戻せます(詳しくは退職した年の住民税の「ふるさと納税や確定申告をしている人は?」)。還付申告をするなら、ふるさと納税も一緒に申告します。確定申告をしないなら、ワンストップ特例の申請はそのまま使えます。
引っ越しや住民税の払い方が変わるときは?
- 住所が変わった — ワンストップ特例の申請後に転居などで住所が変わったら、寄附をした翌年の1月10日までに、寄附先の自治体へ変更届出書を出します[3]。出さないと特例を受けられないと案内している自治体もあります[6]
- 住民税を自分で払う — 退職して給与からの天引きがなくなっても、控除は翌年度の住民税の減額として行われます[1]。退職後の住民税の払い方は退職した年の住民税で解説しています
- 所得税が0円で住民税からだけ控除を受ける — 年末調整などで所得税が0円の人は、住民税の申告書を市区町村に出す必要があります[1]
転職の年に確認することのまとめ
- 前の職場の源泉徴収票を受け取り、新しい勤務先に出す(年末調整を受けるため)
- その年の給与の合計(前の職場+新しい職場)の見込みを立ててから寄附額を決める
- 寄附先は5団体以内か、確定申告をする予定はないかを確認し、ワンストップ特例か確定申告かを決める
- ワンストップ特例の申請書と住所変更の届出は、翌年1月10日必着を目安に出す
退職から入職までのほかの手続き(健康保険・年金・離職票など)は退職後の手続き一覧にまとめています。次の職場は、採用直行便の条件から探すで、病院・クリニックの公式採用ページから直接確かめられます。
参考資料(確認日 2026年10月24日)
- 総務省 ふるさと納税ポータルサイト「税金の控除について」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html
- 総務省 ふるさと納税ポータルサイト「ふるさと納税の概要」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/about.html
- 総務省 ふるさと納税ポータルサイト「制度改正について(2015年4月1日)」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/topics/20150401.html
- 総務省 ふるさと納税ポータルサイト「よくある質問」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/faq/
- 地方税法 附則第7条(e-Gov法令検索) 法律
- 秋田市「ふるさと納税ワンストップ特例制度」 https://www.city.akita.lg.jp/shisei/hoshin-keikaku/1011478/1008502/1003150.html
- 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
- 国税庁「No.2674 中途就職者の年末調整」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2674.htm
- 国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2665.htm
- 東京都主税局「個人住民税」 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/life/kojin_ju
よくある質問
転職した年でもワンストップ特例は使えますか?
使えます。転職したこと自体は条件に関係しません。確定申告をしない給与所得者などで、その年の寄附先が5団体以内であれば申請できます。ただし、前の職場の源泉徴収票を新しい勤務先に出さず年末調整を受けられなかったときや、ほかの理由で確定申告をするときは、ふるさと納税の分も確定申告に含める必要があります。
年の途中で退職して、年内は働かない場合は?
その年の給与が少なくなるので、控除の上限も下がるのが通常です。年末調整を受けていないため、所得税を納めすぎている場合があり、還付を受けるために確定申告をするなら、ふるさと納税も確定申告に含めます。確定申告をしないなら、ワンストップ特例の申請はそのまま使えます。
ワンストップ特例の申請書はいつまでに出せばいいですか?
自治体の案内では、寄附をした年の翌年1月10日必着です(秋田市の例)。申請後に住所や氏名が変わったときも、翌年1月10日までに寄附先の自治体へ変更届出書を出します。
控除の上限額は、どこで正確に分かりますか?
総務省は、具体的な上限額の計算はお住まいの市区町村の住民税を担当する部署に問い合わせるよう案内しています。上限はその年の収入や控除の状況で決まります。
退職した翌年に住民税を自分で払う場合、ふるさと納税の控除はどうなりますか?
控除は、寄附をした翌年度の住民税の減額という形で行われます。給与からの天引きがなくなり納付書で払う場合も、住民税の税額そのものが減ります。税額は市区町村から届く通知で確認できます。
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