宿日直許可とは?医師の当直の扱い・許可基準と転職先で確かめること
宿日直許可とは?

労働基準法第41条第3号は、「監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」には、労働時間・休憩・休日の規定を適用しないと定めています[1]。これを宿直・日直について具体化したのが労働基準法施行規則第23条で、宿直または日直の勤務で断続的な業務について、所轄の労働基準監督署長の許可を受けた場合は、第32条(労働時間)の規定にかかわらず使用できるとしています[2]。
- 許可を受けるのは医療機関 — 医師個人が申請するものではありません。医療機関が許可申請書と添付書類を労働基準監督署に出し、書面の確認と労働基準監督官の実地調査を経て、許可相当と認められると許可書が交付されます[3]
- 許可書 — 「断続的な宿直又は日直勤務許可書」が交付され、宿日直の回数などの条件(付かん)が書かれます。医療機関はこの条件に沿って宿日直を行う必要があります[4]
- 医療法の「宿直」とは別 — 医療法第16条は、病院に医師を宿直させなければならないと定めています。この宿直を行わせること自体には、労働基準監督署長の許可は要りません。許可は、労働時間の規制との関係で必要になるものです[3]
宿日直許可の基準は?
許可の基準には、宿日直全般に共通する基準と、医師・看護師等について細かく定めた基準があります。
一般的な基準(労働局のリーフレットから)
- 常態として、ほとんど労働する必要がないこと — 定時的な巡視、緊急の文書や電話の受け取り、非常事態に備えた待機などが対象です。始業・終業の時刻に密着した時間帯の通常の労働の続きは、原則として対象になりません[4]
- 宿日直手当 — 1回の手当の最低額は、その事業場で宿直・日直に就く予定の同種の労働者の賃金の「一人1日平均額の3分の1以上」です[4]
- 回数 — 宿直は週1回、日直は月1回が限度です。ただし、人数が足りないことと勤務の労働密度が薄いことの要件を満たせば、実態に応じて回数を超えて許可される場合もあります[4]。厚生労働省のFAQでは、宿直週2回・日直月2回といった例外が認められたケースがあると説明されています[3]
- 宿直の睡眠 — 宿直の場合は、夜間に十分睡眠がとれることが必要です[4]
医師・看護師等の基準(令和元年7月1日 基発0701第8号)
厚生労働省労働基準局長の通達「医師、看護師等の宿日直許可基準について」は、次の条件を全て満たし、宿直の場合は夜間に十分な睡眠がとれるものに許可を与えるとしています[5]。
- 通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後であること — 通常の勤務時間が終わっても通常の勤務が続いている間は、許可の対象になりません
- 宿日直中の業務は、特殊な措置を必要としない軽度または短時間の業務に限ること — 通達は例として、医師が少数の要注意患者の状態の変動に対応するための問診等による診察(軽度の処置を含む)や看護師等への指示・確認、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(非輪番日など)に少数の軽症の外来患者やかかりつけ患者に対応することを挙げています
- 上の2つ以外に、一般の宿日直の許可の条件を満たしていること
許可は診療科や時間帯を限って取れる?
取れます。通達は、宿日直の許可は一つの病院・診療所の中で、所属診療科、職種、時間帯、業務の種類などを限って与えることができるとしています。例として「医師以外のみ」「医師について深夜の時間帯のみ」のほか、外来患者の対応は基準に当たらないが病棟の宿日直業務は当たる場合に、病棟宿日直業務のみに限って許可を与えることも挙げています[5]。
- 救急・産科 — 厚生労働省のFAQは、「救急」や「産科」だからという理由で許可を取得できないということはなく、取得している事例があるとしています[3]
- 輪番制 — 地域で夜間の診療を輪番制にしている場合、輪番日以外の日であることを前提にした許可の事例があります[3]
- 準夜帯を除く — 患者が来ることの多い準夜帯を除いた時間帯だけで申請することも可能とされています[3]
- 大きな病院 — 大学病院やそれに準ずる医療機関でも、医師同士の役割分担やタスク・シフト/シェア、許可を取る時間帯の工夫で取得しているケースがあるとされています[3]
このため、同じ病院の当直でも、診療科や時間帯によって許可の有無が違うことがあります。「当直に宿日直許可がある」と聞いたら、どの範囲の許可なのかまで確かめると、実際の扱いが分かります。
許可のある当直とない当直は何が違う?

| 項目 | 宿日直許可のある当直(許可の範囲内) | 宿日直許可のない当直 |
|---|---|---|
| 労働時間の規制 | 許可の範囲で適用されない[1][2] | 適用される(当直の時間は労働時間) |
| 時間外労働の上限(2024年4月から) | 上限規制との関係で労働時間に数えない[3] | 当直の時間が上限の計算に入る |
| 勤務間インターバル | 9時間以上連続した許可のある宿日直は、休息時間として扱える[3] | 休息時間にはならない |
| 賃金 | 宿日直手当(最低額は同種の労働者の1日平均賃金の3分の1以上)[4] | 労働時間として賃金の対象。時間外・深夜の割増賃金の対象 |
| 通常と同じような業務をした時間 | その時間は労働時間。宿日直手当とは別に本来の賃金(割増賃金を含む)[3] | (もともと全体が労働時間) |
同じ「当直」という呼び方でも、許可の有無で、労働時間の数え方・上限との関係・賃金の扱いが変わります。勤務表に「当直」とあるだけでは区別できないので、雇用契約書や労働条件通知書、医療機関の説明で確かめます。
2024年4月からの時間外労働の上限とどう関係する?
2024年4月から、医師にも時間外・休日労働の上限規制が適用されています。医師個人の上限は、A水準で年960時間・月100時間未満、B・連携B・C水準で年1,860時間・月100時間未満です(月100時間未満の上限は例外的に適用されない場合があります)[6]。
- 許可のある宿日直は数えない — 厚生労働省のFAQは、多くの医療機関が許可の取得を進めた理由として、許可を受けた宿日直は上限規制との関係で労働時間に数えないこと、9時間以上連続した許可のある宿日直は勤務間インターバルの休息時間として扱えることを挙げています[3]
- 勤務間インターバル — B・連携B・C水準が適用される医師には、始業から24時間以内に9時間の連続した休息を確保するなどの追加的健康確保措置が求められます[7]
- 副業・兼業先も通算 — 個人の上限は、副業・兼業先の労働時間も通算して判断されます[6]。外勤先の当直に許可があるかどうかで、本務先と合わせた労働時間が変わります
- 兼業先の宿直の回数 — 宿直週1回などの回数の限度は医療機関ごとに認められた回数で、本務先と兼業先がそれぞれ許可を受けていれば、同じ週に本務先で1回、兼業先で1回、許可のある宿直に従事できるとされています[3]
なお、厚生労働省は、許可によって在院時間の一部が労働時間から除かれることをもって、労働時間の短縮や勤務環境の改善がなされたと捉えるべきではないとしています[3][8]。上限との関係で数えなくても、病院にいる時間そのものは変わらない点は意識しておきます。
許可があっても労働時間になるのはどんなとき?
- 通常と同じような業務をした時間 — 通達は、突発的な事故による応急患者の診療・入院、患者の死亡、出産等への対応などを例に挙げ、こうした業務が稀にあっても許可を取り消す必要はないが、その時間は時間外労働の手続き(労働基準法第33条・第36条)をとり、第37条の割増賃金を支払うよう取り扱うとしています[5]
- 通常の業務が常態になっている場合 — 担当する患者数や夜間・休日の急病患者の来院の状況からみて、通常と同じような業務をするのが常態であれば、許可は与えられません[5]
- 実態が許可の内容から離れた場合 — 許可の後に許可の内容どおりの運用ができなくなったり、実態が許可の内容から離れたりした場合は、許可の効力が及ばなくなり、宿日直中の全ての時間が労働時間となる可能性があるとされています。医療機関には勤務内容の見直しや、許可の再申請が求められます[3]
つまり、許可があるかどうかに加えて、実際の当直でどのくらい通常の業務が発生しているかと、その時間をどう記録し、賃金を払っているかが、働く側にとっての実際の違いになります。
転職先では何を確かめる?
面接や見学のときに、次の点を確かめておくと、入職後の当直の扱いが想像しやすくなります。面接全体での聞き方は医師の転職の面接で聞かれること・確かめることにまとめています。
- 許可の有無と範囲 — 自分が入る当直(診療科・時間帯・病棟か外来か)が、宿日直許可の範囲に入っているか
- 当直の回数 — 月に何回か。許可の回数の限度(宿直週1回、日直月1回が原則)との関係
- 夜間の実際の業務 — 救急の受け入れ、病棟からの呼び出し、入院の対応がどのくらいあるか。輪番日かどうかで違うか
- 通常業務をしたときの扱い — 記録の方法(申告・電子カルテのログなど)と、割増賃金の支払い方
- 翌日の勤務 — 当直明けの勤務の扱い。B・連携B・C水準なら勤務間インターバルの運用
- 外勤との関係 — 外勤先の当直を続ける場合の申告方法と、労働時間の通算の管理
- 書面での確認 — 当直の扱いを、労働条件通知書や雇用契約書で確かめる
宿日直許可の有無は、医療機関に聞いて確かめるのが確実です。許可について医療機関が相談できる窓口として、都道府県の医療勤務環境改善支援センターがあります[3]。働く側として疑問があるときは、最寄りの都道府県労働局・労働基準監督署に問い合わせることもできます[4]。
当直の扱いも見ながら転職先を探す
採用直行便の医師向けページでは、採用ページに医師の募集の記載がある病院・クリニックを都道府県・市区町村ごとに一覧で見られます。当直の有無や扱いは、各医療機関の採用ページと面接で直接確かめてください。転職の時期の決め方は医師の転職時期はいつがいい?、直接応募の進め方は医師の直接応募ガイドにまとめています。
参考資料(確認日 2026年10月25日)
- 労働基準法 第41条(e-Gov法令検索) 法律
- 労働基準法施行規則 第23条(e-Gov法令検索) 省令
- 厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」(2024年8月6日版) PDF/いきいき働く医療機関サポートWeb「役に立つ情報」 ページ
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「宿日直許可申請を検討する事業主の皆さまなどへ」(東京労働局掲載) PDF
- 厚生労働省労働基準局長通達「医師、看護師等の宿日直許可基準について」(令和元年7月1日 基発0701第8号。第67回社会保障審議会医療部会 参考資料1-3「医師の宿日直許可基準・研鑚に係る労働時間に関する通達」に収録) PDF
- 厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」 ページ
- 厚生労働省「医師の働き方改革の制度について」 ページ
- 厚生労働省労働基準局「宿日直許可取得後の適切な労務管理のために」 PDF
よくある質問
宿日直許可とは何ですか?
宿直・日直のうち、常態としてほとんど労働する必要のない断続的な業務について、使用者が所轄の労働基準監督署長から受ける許可です(労働基準法第41条第3号、労働基準法施行規則第23条)。許可を受けると、その許可の範囲で、労働基準法の労働時間・休憩・休日の規定が適用されなくなります。
宿日直許可のある当直は、時間外労働の上限に数えられますか?
厚生労働省のFAQでは、宿日直許可を受けた宿日直は、2024年4月から始まった医師の時間外労働の上限規制との関係で労働時間として数えられないとされています。ただし、宿日直中に通常の勤務と同じような業務をした時間は労働時間になり、宿日直手当とは別に本来の賃金(割増賃金を含む)が支払われます。
救急や産科の当直でも宿日直許可は取れますか?
取れる場合があります。厚生労働省のFAQは、「救急」や「産科」だからという理由で許可を取得できないということはなく、実際に取得している事例があると説明しています。許可は、診療科・職種・時間帯・業務の種類を限って受けることもできます。
非常勤の医師の当直も宿日直許可の対象になりますか?
なります。厚生労働省のFAQで、非常勤の医師についても宿日直許可の対象になると説明されています。本務先と兼業先がそれぞれ許可を受けていれば、それぞれで認められた回数の範囲内で、許可のある宿直に従事できるとされています。
許可のない当直はどう扱われますか?
許可のない当直は、労働基準法の労働時間の規制の対象になり、当直の時間は労働時間として扱われます。時間外労働の上限の計算にも含まれ、時間外・深夜の割増賃金の対象になります。許可を受けていても、実態が許可の内容から離れていれば、宿日直中の全ての時間が労働時間になる可能性があると厚生労働省のFAQは説明しています。
次の職場は、公式採用ページから直接応募
採用直行便は、全国の病院・クリニックが自ら公開している公式採用ページを、市区町村・診療科・最寄り駅から探せる無料のサイトです。会員登録は要りません。紹介会社を通さずに応募すると、採用する医療機関に紹介手数料の負担がかかりません。
この記事は一般的な情報提供です。制度・料金・サービス内容は変わることがあります。手続きや申し込みの前に、必ず各機関・各社の公式情報をご確認ください。