企業型確定拠出年金は転職したらどうなる?企業型DCの退職後の手続きと自動移換
転職・退職したら企業型DCの資産はどうなる?

企業型DCは、勤務先が掛金を出し、加入者本人が運用して、原則60歳以降に受け取る年金制度です。資産は一人ひとりの口座(個人別管理資産)で管理され、転職しても次の制度に持ち運べます。
退職すると、企業型DCの加入者の資格を失います。資格を失うのは、原則として勤務先に使用されなくなった日の翌日、つまり退職日の翌日です(確定拠出年金法第11条)[1]。その後、資産をどこに移すかの手続きが必要になります[3]。
病院・クリニックには、企業型DCを導入しているところと、していないところがあります。転職先の制度によって手続きが変わるので、まず次の一覧で自分がどれに当てはまるかを確かめてください。
移換先はどこ?転職・退職後の立場ごとの一覧
| 転職・退職後の立場 | 主な移換先 | 手続きの窓口 |
|---|---|---|
| 転職先に企業型DCがあり、加入する | 転職先の企業型DC | 転職先の勤務先(担当部署) |
| 転職先に企業型DCがない(厚生年金に加入する) | iDeCo | 自分で選んだiDeCoの運営管理機関 |
| 公務員として働く | iDeCo | 同上 |
| 専業主婦(夫)など、国民年金の第3号被保険者になる | iDeCo | 同上 |
| 自営業・フリーランス・求職中など、国民年金の第1号被保険者になる | iDeCo | 同上 |
出典:iDeCo公式サイト「転職・退職された方へ」[3]、確定拠出年金法第80条・第82条[1]。このほか、転職先の確定給付企業年金の規約で受け入れを定めている場合はその制度へ、企業年金連合会の通算企業年金へ移す方法も法律で定められています(同法第54条の4・第54条の5)[1]。
転職先に企業型DCがあるときは?
転職先の企業型DCに加入する場合は、転職先の勤務先を通じて、前の企業型DCの資産を移す申し出をします(確定拠出年金法第80条第1項)[1]。入職したら、担当部署に「前の職場の企業型DCの資産を移したい」と伝えて、必要な書類を確認してください。
法律では、転職先の企業型DCに加入した後、前の企業型DCの資格を失った月の翌月から6か月を過ぎても前の制度に資産が残っているときは、転職先の企業型DCに移すとされています(同条第2項)[1]。ただし、手続きの進め方は制度ごとに違うため、任せきりにせず、入職したら担当部署に確認しておくと安心です。
転職先に企業型DCがない・公務員になるときは?
転職先に企業型DCがない場合や、公務員として働く場合は、資産をiDeCoに移します。会社員や公務員など厚生年金の被保険者は、国民年金の第2号被保険者としてiDeCoに加入できます[4]。
- 窓口 — iDeCo公式サイトの「運営管理機関一覧」に載っている機関(金融機関など)から自分で1つ選び、そこに連絡します[3]
- 移換の書類 — 「個人別管理資産移換依頼書(K-003)」を提出します[3]
- 掛金も出す場合 — 「個人型年金加入申出書(K-001)」で加入の申し出も行います。勤務先の証明書(一般の人はK-109A、共済組合員はK-109B)が必要な場合があります。一部の運営管理機関ではオンラインで手続きできます[3]
- 掛金を出さない場合 — 資産を移して運用だけを続ける「運用指図者」になることもできます(確定拠出年金法第64条第2項)[1]
iDeCoの掛金は月5,000円から、1,000円単位で決められます。企業年金に加入している人や公務員は、毎月定額で拠出します[4]。なお、2026年12月1日から、加入できる年齢の上限の引き上げ(65歳未満→70歳未満)と、第2号加入者の拠出限度額の見直しが予定されています[5][6]。
専業主婦(夫)や自営業になるときは?
退職して、厚生年金に入っている配偶者に扶養される第3号被保険者になる場合や、自営業・求職中などの第1号被保険者になる場合も、移換先はiDeCoです[3]。手続きは上と同じで、運営管理機関を選んで移換の書類を出します。
第1号被保険者でも、国民年金保険料の免除を受けている人はiDeCoの加入者(掛金を出す人)になれません(確定拠出年金法第62条第1項)[1][4]。この場合は、運用指図者として資産を移すか、要件を満たせば脱退一時金を検討します(下の「脱退一時金は受け取れる?」を参照)。
退職後に国民年金の種別が変わるときは、公的年金の手続きも必要です。空白期間の国民年金については転職の空白期間の年金の記事にまとめています。
手続きの期限はいつまで?6か月の数え方

確定拠出年金法第83条は、企業型DCの加入者の資格を失った日が属する月の翌月から数えて6か月以内に、転職先の制度やiDeCoなどへ移換されなかった資産を、国民年金基金連合会に移すと定めています[1]。
| 例 | 資格を失う日 | 6か月の数え始め |
|---|---|---|
| 3月31日に退職 | 4月1日 | 5月から数えて6か月 |
| 4月15日に退職 | 4月16日 | 5月から数えて6か月 |
注意したいのは、法律が「申し込んだかどうか」ではなく「移換されたかどうか」で決めている点です。運営管理機関を選ぶ、書類を取り寄せる、勤務先の証明をもらう、といった準備に時間がかかるので、退職したらすぐに始めるのが確実です。
2026年4月1日からは、自動移換を減らすため、勤務先(事業主)が移換について説明する時期が、資格を失ったときから「資格を失うことが見込まれるとき」に前倒しされました[5]。退職が決まったら、勤務先の説明や資料で、自分の資産額と手続きの方法を確かめておきましょう。
手続きしないとどうなる?自動移換の不利益
6か月以内に移換も脱退一時金の請求もしないと、資産は国民年金基金連合会(特定運営管理機関)に自動移換されます。iDeCo公式サイトは、自動移換の不利益として次の3つを挙げています[3]。
- 運用されない — 自動移換されている間、資産は運用されません
- 手数料がかかる — 自動移換されるときの手数料と、自動移換されている間の管理手数料が資産から差し引かれます
- 受給開始が遅れることがある — 自動移換中の期間は、老齢給付金の受給要件となる「通算加入者等期間」に入りません。60歳から受け取るには通算加入者等期間が10年以上必要なため、受け取り始められる年齢が遅くなることがあります[7]
| 手数料の項目 | 特定運営管理機関 | 国民年金基金連合会 |
|---|---|---|
| 自動移換されるとき | 3,300円 | 1,048円 |
| 自動移換されている間の管理手数料 | 月58円 | 月40円 |
| その後iDeCoへ移すとき | 550円 | 2,829円 |
| その後企業型DCへ移すとき | 550円(移換先で別にかかる場合あり) | - |
出典:iDeCo公式サイト(2026年10月23日確認)[3]。管理手数料は、自動移換された月の4か月後から負担になり、年度分をまとめて4月に資産から差し引かれます。資産が0円の人には手数料はかかりません。
自動移換されてしまったら?
自動移換されると、前の勤務先の企業型DCの記録関連運営管理機関などから、その旨の通知が届きます(確定拠出年金法第83条第2項)[1]。気づいた時点で、iDeCoか転職先の企業型DCへ移す手続きをすれば、自動移換の状態を終わらせられます。
- iDeCoに移す — iDeCoに加入した場合や、自動移換後6か月以内にiDeCoの加入者になったことが確認できた場合は、移換の申し出をしなくても移換処理が行われるようになっています[3]
- 企業型DCに移す — 自動移換された人が転職先で企業型DCの加入者になったときは、国民年金基金連合会から転職先の企業型DCに資産を移すと定められています(同法第80条第3項)[1]
自動移換の状態が続くかぎり、管理手数料がかかります(自動移換された月の4か月後から)[3]。前の職場から届いた書類を確かめ、早めに動くことが大切です。
脱退一時金は受け取れる?
確定拠出年金は、原則として60歳になるまで引き出せません。例外として、次のどちらかに当てはまる場合だけ、脱退一時金として受け取れます。
- 企業型DCから受け取る場合 — 企業型DC・iDeCoのどちらの加入者・運用指図者でもないこと、資産額が1万5千円以下であること、最後に資格を失った月の翌月から6か月を過ぎていないこと(同法附則第2条の2、同施行令第59条)[1][2]
- iDeCo側の要件で受け取る場合 — 60歳未満である、企業型DCの加入者でない、iDeCoに加入できない人である(国民年金保険料の免除を受けている人など)、障害給付金の受給権者でない、通算拠出期間が5年以下または資産額が25万円以下である、最後に資格を失った日から2年以内である、などの要件をすべて満たすこと(同法附則第3条、同施行令第60条)[1][2][7]
転職して厚生年金に入る人や、第3号被保険者になる人は、原則としてiDeCoに加入できるため、iDeCo側の要件には当てはまりません。また、脱退一時金を受け取ると、その前月までの加入期間は通算加入者等期間に入らなくなります(同法附則第3条第5項)[1]。自動移換された人が請求するときは、特定運営管理機関での受け取りに4,180円の手数料がかかります[3]。
iDeCoの運営管理機関はどう選ぶ?
iDeCoに移す場合は、運営管理機関を自分で1つ選びます。どの機関・商品がよいかは人によって違うので、ここでは比べるときの観点だけを挙げます。
- 手数料 — 口座の管理などにかかる手数料を、運営管理機関ごとに確かめます。資産があるかぎり続く費用なので、比べておきたい点です
- 商品のラインナップ — 前の企業型DCで選んでいた商品と同じものがあるとは限りません。移した後にどの商品で運用するかを、各機関の商品一覧で確かめます
- サポート — 電話窓口の受付時間、オンラインで手続きできるか、書類の取り寄せやすさ
将来の運用成果は誰にも約束できません。商品を選ぶときは、運営管理機関から渡される資料で、それぞれの商品の内容とリスクを確かめてください。
移換の手続きとあわせて、家計や老後資金の考え方をお金の専門家に相談したい人は、次のような相談サービスもあります。
応募先の退職金・年金制度はどう確かめる?

企業型DCがあるかどうかは、病院・クリニックごとに違います。退職金(退職手当)の定めがある場合、その対象者や計算・支払いの方法は、労働契約を結ぶときに明示する労働条件の一つです(労働基準法施行規則第5条)[8]。応募の段階では、次の点を確かめておくと、入職後の手続きの見通しが立ちます。
- 企業型DCの有無 — あれば、入職時に前の職場の資産を移す手続きの案内があるか
- ほかの退職金制度 — 確定給付企業年金など、ほかの制度があるか
- iDeCoの扱い — 企業型DCがない場合、iDeCoの加入に必要な勤務先の証明書を書いてもらえるか
採用ページの「福利厚生」欄や募集要項に書かれていることがあります。書かれていなければ、面接や見学の際に質問してかまいません。内定後に受け取る書面の確認ポイントは労働条件通知書の確認事項の記事を、公式採用ページから直接応募する流れは直接応募ガイドを参考にしてください。
参考資料(確認日 2026年10月23日)
- 確定拠出年金法(e-Gov法令検索) 法律
- 確定拠出年金法施行令(e-Gov法令検索) 政令
- 国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト「転職・退職された方へ」 ページ
- 国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等」 ページ
- 厚生労働省「2025年の制度改正」(確定拠出年金) ページ
- 国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト「制度改正について」 ページ
- 国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト「給付について」 ページ
- 労働基準法施行規則(e-Gov法令検索) 省令
よくある質問
企業型DCの資産は、退職したら現金で受け取れますか?
原則として受け取れず、転職先の企業型DCやiDeCoに移して60歳以降の受け取りを待ちます。例外は脱退一時金で、資産が1万5千円以下である、または60歳未満で通算拠出期間5年以下か資産25万円以下であるなどの要件をすべて満たす場合に限られます(確定拠出年金法附則第2条の2・第3条、同施行令第59条・第60条)。
手続きの期限はいつまでですか?
企業型DCの加入者の資格を失った日が属する月の翌月から数えて6か月以内に移換が終わらないと、資産は国民年金基金連合会に自動移換されます(確定拠出年金法第83条)。資格を失う日は、原則として退職日の翌日です(同法第11条)。書類のやり取りに時間がかかるので、退職後すぐに手続きを始めてください。
自動移換されると、どんな不利益がありますか?
資産が運用されないこと、自動移換の手数料と毎月の管理手数料が資産から差し引かれること、自動移換中の期間が老齢給付金の受給要件となる通算加入者等期間に入らず、受け取り始められる年齢が遅くなる場合があることです(iDeCo公式サイト)。
自動移換されたままでも、あとから手続きできますか?
できます。iDeCoや転職先の企業型DCへ移す手続きをすれば、自動移換の状態は終わります。iDeCoに加入した場合や、自動移換後6か月以内にiDeCoの加入者になったことが確認できた場合は、移換の申し出をしなくても移換処理が行われるようになっています(iDeCo公式サイト)。
公務員として働く職場に転職する場合はどうなりますか?
公務員も厚生年金の被保険者(国民年金の第2号被保険者)として、iDeCoに加入できます。企業型DCの資産はiDeCoに移し、掛金を出す「加入者」になるか、掛金を出さずに運用だけ続ける「運用指図者」になるかを選びます。
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この記事は一般的な情報提供です。制度・料金・サービス内容は変わることがあります。手続きや申し込みの前に、必ず各機関・各社の公式情報をご確認ください。