医師がクリニックへ転職するとき見学・面談で確認すること7つ|診療・体制・契約
クリニックと病院では働き方がどう違う?

医療法では、20人以上の患者を入院させる施設を持つものを「病院」、入院施設を持たないか、19人以下の患者を入院させる施設を持つものを「診療所」と定めています(医療法第1条の5)[1]。一般に「クリニック」と呼ばれるのは診療所です。
クリニックは、病院に比べて医師・スタッフの人数が少ないことが多く、医師一人ひとりの担当範囲が広くなりがちです。外来の進め方、検査の範囲、在宅医療の有無などは院によって大きく違うため、同じ診療科でも働き方は一様ではありません。だからこそ、見学と面談で具体的に確かめることが大切です。
診療内容は何を確かめる?
- 標榜科と患者層 — 主な診療科、子ども・高齢者など患者さんの年齢層、慢性疾患の継続診療が多いか急性疾患が多いか
- 専門外の対応 — 自分の専門以外の症状の患者さんをどこまで診るか、紹介先の病院はどこか
- 検査・処置 — 超音波・内視鏡・X線などの検査を医師が自分で行うか、検査技師がいるか
- 外来以外の業務 — 在宅医療(訪問診療)、健診・予防接種、学校医・産業医などの業務があるか
患者数の目安はどう聞く?
勤務の負担を見積もるには、患者数の目安が欠かせません。次のように具体的に尋ねると、比べやすくなります。
- 1日(午前・午後)の外来患者数のおおよその幅
- 季節による違い(感染症の流行期、予防接種の時期など)
- 予約制か順番制か、予約1枠あたりの時間
- 医師が複数いる日は、どのように患者さんを分けるか
数字そのものより、「多い日にどう回しているか」「受付終了後に診察が延びることがあるか」を聞くと、実際の働き方が見えてきます。
体制は?一緒に働く人と役割分担

- 医師の人数 — 院長のほかに常勤医・非常勤医がいるか。自分が一人で診療する時間帯があるか
- スタッフ — 看護師・医療事務・検査技師などの人数と、医師が担う事務作業(書類作成、紹介状など)の範囲
- 院長との役割分担 — 診療方針の決め方、相談のしかた、経営や人事への関わり
- 休みの取り方 — 学会や休暇のときに代わりの医師を手配するのは誰か
オンコール・時間外の対応はある?
無床のクリニックでも、時間外の対応がある場合があります。在宅医療を行う院では夜間・休日の連絡への対応、地域の休日当番医、健診や学校医の業務などです。有無・回数・呼び出しの頻度・当番の分担を確認します。
雇用されて診療に従事する医師には、2024年度から時間外・休日労働の上限規制が適用されています。一般の医療機関(A水準)では年960時間・月100時間未満(例外あり)が上限で、副業・兼業先の労働時間も通算して判断されます[2]。他の医療機関での非常勤や当直を続ける予定があるなら、そのことも面談で伝えておきます。
電子カルテ・システムは何を使っている?
- 電子カルテの製品名と、自分が使ったことがあるか
- 医師が入力する範囲(オーダー、病名、文書作成)と、クラーク(医師事務作業補助)がいるか
- 予約システム、問診の仕組み(紙かWEBか)、オンライン診療を行っているか
- 検査結果・画像の見方(院内のシステムか、外部の検査会社の画面か)
見学のときに画面を見せてもらうと、操作に慣れるまでの時間を見積もりやすくなります。
医師賠償責任保険の扱いは?
医療事故で損害賠償を請求されたときに備える保険です。確認したいのは、勤務先が加入している保険が、勤務医個人の責任まで補償するか、個人で加入する必要があるかです。
参考として、日本医師会のA会員(病院・診療所の開設者や管理者などのA①、それ以外のA②(B)、研修医のA②(C))には、日本医師会医師賠償責任保険が自動で付いており、個別の加入手続きは不要とされています。開設者・管理者としての責任や法人の責任への備えは、任意加入の特約保険で上乗せする仕組みです[3]。自分がどの会員区分か、勤務先の保険と重なる部分はどこかを確かめましょう。
契約形態は?雇用と業務委託
常勤でも非常勤でも、契約が雇用契約か業務委託契約かを確認します。どちらかで、労働時間の決まり、社会保険・雇用保険・労災保険、税金の扱いが変わります。
- 雇用契約の場合 — 使用者は、契約期間・就業の場所と業務・始業と終業の時刻・休日・賃金・退職に関する事項などを書面で示さなければなりません(労働基準法第15条、同法施行規則第5条)[4]。2024年4月からは、雇い入れ直後の就業場所・業務に加えて、将来変わり得る範囲(変更の範囲)も示すことになっています[5]。分院への異動があり得るかは、ここで確認できます
- 業務委託契約の場合 — 従業員を使用しない個人に業務を委託する事業者は、業務の内容・報酬の額・支払期日などを書面または電子メールなどで示す義務があります(フリーランス・事業者間取引適正化等法)[6]
契約書に書かれていない条件(当直の扱い、学会参加の扱いなど)があれば、入職前に書面に加えてもらうか、メールで記録を残しておきます。
見学・面談のチェックリスト

| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 診療内容 | 標榜科、患者層、専門外の対応、検査・処置、在宅・健診の有無 |
| 患者数の目安 | 1日の外来の幅、季節の違い、予約制か順番制か |
| 体制 | 医師の人数、スタッフの体制、院長との役割分担、休みの代わり |
| 時間外 | オンコール・休日当番・往診の有無と回数、受付終了後の延長 |
| 電子カルテ | 製品名、医師の入力範囲、クラークの有無、予約・問診の仕組み |
| 医師賠償責任保険 | 勤務先の保険の補償範囲、個人加入の要否 |
| 契約形態 | 雇用か業務委託か、就業場所の変更の範囲、書面の内容 |
クリニックの採用ページを探すには
採用直行便の医師向けページでは、採用ページに医師の募集の記載がある病院・クリニックを都道府県・市区町村別に見られます。記載の有無は採用ページの文章から機械的に判定したもので、募集の内容や現在も募集中かは、必ずリンク先の採用ページで確かめてください。連絡の進め方とメールの例文は医師の直接応募ガイドにまとめています。
参考資料(確認日 2026年10月22日)
- 医療法 第1条の5(e-Gov法令検索) 法律
- 厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」 ページ
- 公益社団法人日本医師会「日本医師会医師賠償責任保険制度」 ページ
- 労働基準法 第15条(e-Gov法令検索) 法律/労働基準法施行規則 第5条 施行規則
- 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」 ページ
- 公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」 ページ
よくある質問
クリニックの見学では何を見ればいいですか?
外来の流れ(受付から会計まで)、診察室と検査機器、電子カルテの画面、スタッフの人数と役割分担を見ると、働いたときの様子を想像しやすくなります。見学は診療中のほうが様子が分かりますが、患者さんへの配慮もあるため、時間帯は医療機関と相談して決めます。
患者数を面談で聞いても失礼になりませんか?
勤務の負担を見積もるために必要な情報なので、聞いて構いません。「1日の外来患者数の目安」「季節による違い」「予約制か順番制か」のように具体的に尋ねると、答えてもらいやすくなります。
医師賠償責任保険は自分で入る必要がありますか?
勤務先の加入状況と、その保険が勤務医個人の責任まで補償するかによります。日本医師会のA会員には医師賠償責任保険が自動で付いていますが、補償の範囲や特約は会員の区分によって違います。勤務先と保険の内容を確認してから決めます。
雇用契約と業務委託契約のどちらになるかで何が変わりますか?
雇用なら労働基準法の労働時間の決まりや労災保険が適用され、条件によって社会保険・雇用保険にも加入します。業務委託ではこれらの扱いが変わります。契約書の種類と内容を確認し、判断が難しいときは社会保険労務士や税理士に相談してください。
次の職場は、公式採用ページから直接応募
採用直行便は、全国の病院・クリニックが自ら公開している公式採用ページを、市区町村・診療科・最寄り駅から探せる無料のサイトです。会員登録は要りません。紹介会社を通さずに応募すると、採用する医療機関に紹介手数料の負担がかかりません。
この記事は一般的な情報提供です。制度・料金・サービス内容は変わることがあります。手続きや申し込みの前に、必ず各機関・各社の公式情報をご確認ください。